HOME > 開発ストーリー
北陸先端科学技術大学院大学 岡島麻衣子博士
サクランの発見は、ある意味では運命のようなものでした。
私は北陸先端科学技術大学院大学で、「脱石油」をめざす研究グループの一員として、有効な植物・微生物由来の物質を探していました。様々な研究を重ねるなかで、ある日、可能性のある微生物として候補にあがったのが「スイゼンジノリ」でした。
どこかで馴染みのある名前と思えば、それもそのはず、私の生まれ故郷、熊本・水前寺で発見され命名された伝統食材だったのです。何かしらピン!とくるものを感じ、この生物の作る代謝物質を研究のターゲットにした結果、発見したのが「サクラン」でした。
研究を進めるほど、サクランの特徴は際立っていました。何よりも保水力が高い。例えば化粧品などで広く使われるヒアルロン酸に比べると、肌のように塩性を帯びている状態では約10倍もの保水力があることが分かりました。さらに純水であれば自分の重さの6000倍もの水を吸収するという驚きの数字です。
そしてもうひとつの大きな特徴が、分子の大きさでした。日本では浸透度が高いナノ成分をありがたがる傾向がありますが、実は海外ではその限りではありません。それどころか、微粒子が肌を通り越し体内に取り込まれてしまうリスクを心配する声さえあります。
その点、決して肌の中に浸透せず肌表面で水のヴェールを形成し肌を守るようなサクランは理想的でした。そのものがたっぷりの水分を含むだけでなく、肌自体から蒸発してくる水分も閉じ込めるため、内と外からしっかり潤いが生まれるのです。
おまけに、サクランは塩分と融合すると2倍近く粘性が増すという点も、スキンケアには最適でした。肌の上には常に塩分が存在していますから、自然とサクランはゲル化することになります。これにより汗で流れ落ちることもなく、長時間水のヴェールとなって肌を潤し守ってくれるのです。
北陸先端科学技術大学院大学 マテリアルサイエンス研究科博士研究員。
天然高分子、藍藻由来多糖類専門。
2006年6月 スイゼンジノリから全く新しい多糖類を発見しサクランと命名。
2006年9月 国際純正・応用化学連合(IUPAC)主催 Green Sustainable Chemistry国際会議(ドレスデン)にてサクランを発表しPoster prize 受賞。
2006年10月 積水化学「自然に学ぶものつくり」研究助成プログラム奨励賞受賞。
2007年6月社団法人繊維学会年会にて優秀発表賞受賞。
2012年 「第4回ものつくり日本大賞」九州経済産業局局長賞受賞。
天然高分子、藍藻由来多糖類専門。
2006年6月 スイゼンジノリから全く新しい多糖類を発見しサクランと命名。
2006年9月 国際純正・応用化学連合(IUPAC)主催 Green Sustainable Chemistry国際会議(ドレスデン)にてサクランを発表しPoster prize 受賞。
2006年10月 積水化学「自然に学ぶものつくり」研究助成プログラム奨励賞受賞。
2007年6月社団法人繊維学会年会にて優秀発表賞受賞。
2012年 「第4回ものつくり日本大賞」九州経済産業局局長賞受賞。